人気ブログランキング | 話題のタグを見る

●12月5日の『カーネーション』

「糸ちゃん、あんた、金輪際、勘助に会わんといてんか。世の中っちゅうのはみんながあんたみたいに強いんと違うんや。みんなもっと弱いんや。みんなもっと負けてんや。うまいこといかんと悲しうて、自分がみじめなんもわかってる。そやけど生きていかとあかんさかい、どないかこないかやっとんや。あんたにそんな気持ちわかるか。商売もうまいこといって家族もみんな元気で結構なこっちゃな。あんたにはなんもわからへんわ。・・・・今の勘助にあんたの図太さは毒や。もう近づかんといて。」

軍隊から帰ってからずっと自分の殻に閉じこもる勘助。そんな勘助を励まそうと糸子がしたことが裏目に。深く傷ついた勘助が自殺未遂までおこす。怒った勘助母が糸子にぶつけたのが冒頭の台詞。こんなに激しい、ヒロイン人格批判は朝ドラ史上初めてではないだろうか。
●12月5日の『カーネーション』_f0234728_21114618.jpg


韓国ドラマに『愛と野望』というのがある。
1960年代~90年代を背景に一家の多様な人間模様と愛憎を描いたものだ。好評で30話(!)延長され、81話になった大作である。ここまで言うかのリアリティーあるヘビーな台詞に毎回毎回、テレビの前で雷に打たれたようになった。その通りとうなずいたり、心の内を見透かされた気がして暗澹たる気持ちになったりもした。親との対立、思春期の子供、出世欲、嫉妬、一筋縄ではいかない男と女の関係、家庭と仕事、DV、アルコール中毒、鬱病などをえぐる台詞は深い人間観察に裏打ちされ、簡単に善か悪かと言い切れない心のひだひだまで露わにしていた。
脚本家キム・スヒョンが『言葉の魔術師』と言われるのも納得の人間ドラマだった。

『カーネーション』の脚本家、渡辺あやも近いうちにそう呼ばれる日がくるかもしれない。
見ている者の心に鋭く突き刺さった、12月5日の『カーネーション』であった。
by feliza0930 | 2011-12-06 09:19 | ・DRAMA