●ミラノと大久保 ~『ミラノ、愛に生きる』

「だからあ、大久保で、若いイケメン韓国人のいるカフェにむらがっているおばちゃんとは全然違うのよ」友人は力説する。

そう、その日は映画なんか行くつもりは全然なかった。
たまたまレディースデーだったのだ。
たまたま「そうだ、映画にいこう」と思い立ったのだ。

別に誘われたわけでもない。
「今から映画に行くの。ジル・サンダーのファッションを目当てに」ファッション?ジル・サンダーの名前は聞いたことがあるようなないような・・だったが、純粋にきれいな洋服を見たいと思った。「私も行く」と手をあげた。
芸術性が高いばかりに頭が痛くなった映画ブンミおじさんの森以来、映画館からは遠ざかっている。
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座席に座った。始まる直前に友人に聞く。
「ところでこの映画、何のジャンル?」「恋愛映画。息子の友人と恋に落ちる女性の話」
ふ~ん。ありがちなストーリー、ちょっとテンションが下がった。
映画が始まった。イタリアの上流家庭らしい。ああ、眠い、眠い、眠い、眠い。午前中、頭を使う作業をしたせいだろう。タラタラと進む話が眠くてしょうがない。
何とかというデザイナーのファッションを見なくちゃいけないのに。音楽の使い方が変わっているので時々、目が覚める。息子の友人が登場した。ああ、この顔の濃い人と恋に落ちるのね、と思うやいなやあっと言う間に・・・後でこの映画はR15であったことを知った。

最愛の母と親友が恋に落ちたことを知り裏切られたと思った息子に悲劇が待っていた。不慮の事故。そして葬式。
不倫の果ては罪の呵責でしょう。罰でしょう。ましてや息子が死んだのだから。それは古今東西、映画のお約束!

ところが、ここから映画は俄然、面白くなった。
埋葬がすみ屋敷に親族が集まっている。夫は妻に「これからは二人で人生を生きていこう」とそっと抱きしめる。妻は「ごめんなさい、〇〇を愛しているの」と言って夫の手を振りほどく。
彼女は急に螺旋階段をかけ上る。お手伝いさんが「奥様」と悲鳴を上げながら後を追いかける。私は彼女は飛び降り自殺をするのだと思った。彼女にずっと仕えていたお手伝いさんは自殺を止めにいったのだと。
ところがですよ。彼女は自分の部屋に飛び込む。何をしでかすかと思うと、喪服を脱ぎだす。真珠の首飾りをとる。クローゼットを開ける。洋服が舞う。慌ただしく鞄に洋服を詰め込む。お手伝いさんも必死で手伝う。最後に結婚指輪を外しベッドに置く。お手伝いさんとひしひしと抱き合う。
彼女の服はというと、宅急便のお兄さんのようなジャージーの上下。
そして鞄を持ち階段を駆け下りて家を飛び出す。家族、親族一同、唖然。ただ、母の気持ちを知っているらしい娘の目には涙が浮かんでいる。

音楽もない。
クレジットが流れた後、山(男は郊外に住んでいる)で抱き合う男と妻をぼんやりと映し出す。
急な展開で面白くなって数分後、映画が終わった。
「アジアとは倫理感が違うね。息子が死んでも、男の元に走るのね。」
「違うの。この映画はそういうのじゃないの。ロシアから上流家庭に嫁に来て、名前もイタリア風に変えて抑圧された生活をしてきた女の再生の話なの。〇〇はロシア人である彼女をまるごと受け止めていたでしょ。」
「アイデンティティを取り戻したというわけ?」
「だからあ、大久保で若いイケメン韓国人目当てにたむろしているおばちゃんとは違うの」
はぁ。そんなものですかね。ほとんどウトウトしていたので大事な伏線を見逃していたのだろう。愛ゆえに自己再生ができたのか、自己再生のために若い男を利用したのか・・・

ともかく私一人で見に行ったら、見方を誤るところだった(笑)。頭が痛くなる映画や難解な現代アートは連れといくのに限る。

で、肝心のファションはというと
51歳、二児の母とは思えぬスリムさ。贅肉無縁の181cmのモデル体型は何着ても似合う。全然参考にはなりませんでしたよ007.gif
by feliza0930 | 2012-01-20 14:10 | ・MOVIE | Comments(0)