●『辞書』を編む②~サンキュー・タツオ

「皆さん、『舟を編む』の映画を見ましたか?
現実は文系男子にはヒロインいない、友達いない、ただ本が増えていく・・なんですけど(笑)ね。」
壇上に国語辞書をズラ~ッと並べて話すその人はサンキュータツオ。
2012年、本屋大賞を受賞した『舟を読む』関連で最近、マスコミでよく見聞きする辞書マニアの芸人だ。
「映画の中でなるべく新しい言葉を入れようとする松本教授がでてくるが、ははぁ、これは私立大学系~三省堂系とピンときた。199●年の話なのに教授の書斎に2004年出版の辞書があった」と辞書マニアならではの細かいエピソードで聴衆を笑わす。

ところで私は今、国語辞書を三冊持っている。『学研現代国語辞典』『小学館国語辞典(子供向き)』と『語感の辞典(岩波書店)中村明』だ。
前の二冊は必要に迫られて買ったものだが『語感の辞典』は朝日新聞に紹介されていて買い求めた。
辞書は客観的に書かれたものと思っていたが、『語感の辞典』は全く異なる。
何時しか:「いつの間にか」の意で、主に文章中に用いられる古風で思い入れたっぷりな表現。

どうです?この主観たっぷりな解釈(笑)。こんな辞典は他にあるまい。

サンキュータツオは早稲田大学で中村明の門下生だった。
「早稲田大学院卒業まで14年かかった。学資借金が500万!まったく実家暮らしでなければやっていけなかった。」芸人の傍ら一橋大学留学生に日本語学を教えているサンキュー氏。「教授としては留学生にはなめられないように」「芸人としてはいい加減に」をモットーらしく講演前半は辞書をめぐる話を芸人トークで笑わせ、後半は学者らしく講義する。

保守的オーソドックスで古文に強い『岩波国語辞典』。
「モトカレ」「パワハラ」など生きた言葉を入れることに積極的、時代を映す鏡であることを目指す『三省堂国語辞典』。
一言多いユニークな語釈の『新明解国語辞典
(例えば有名な項目 動物園:生態を公衆に見せ、かたわら保護を加えるためと称し、捕えて来た多くの鳥獣・魚虫などに対し、狭い空間での生活を余儀無くし、飼い殺しにする、人間中心の施設)
留学生に勧めたい基本に忠実『基礎日本語辞典』。サンキュー氏は是非、目を通ておきたいのが辞書の『序文』と言う。
辞書の自己紹介ともいえる序文にこそ編者の目指す哲学が「編み」こまれているからだ。
「大学生に下請けさせ、パッチワークする芋辞書(広辞苑?)とは違い、ゼロから作り上げた辞書」と自負する『新明解』。本当にそんなことが書いてあるのだろうか。書店で『新明解』を確かめたい。

講演後半は国語辞書の歴史を紐解く。
近代国語辞典』は「いろは」から「あいうえお」順にしたのが画期的。福沢諭吉は下足番でも「いろは」なのに「あいうえお」順とはけしからんといい、出版祝賀会に来なかった。意外に料簡の狭い奴だと福沢諭吉大先生もサンキュー氏の手にかかると形無しだ。

サンキュー氏は基本語(日常生活でよく使う言葉)を見て、自分の感性に合うのを探すのが辞書選びのポイントだとアドバイスする。
漢字、ひらがな、カタカナと世界でも類を見ないビジュアル系言語である日本語。さあ、国語辞典を引こう!めくるめく世界が待っている!サンキュー氏は辞書引きの楽しさに誘う。

講演終了後、サンキュー氏の著書『学校では教えてくれない!国語辞典の遊び方』にサインしてもらった。先着30名様限りのファイルも見事ゲットした。
印税も入ることだし、学資ローンも払い終わるのももうすぐですね?サンキュー氏。それともネタかな(笑)。

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<台湾 宜蘭観光農園にて>

*サンキュータツオと『舟を編む』の三浦しをんとはたまたま早稲田の同期生だったということだ。
by feliza0930 | 2013-04-22 22:21 | ・LANGUAGE | Comments(0)