●『辞書』を編む④~ケンボー先生と山田先生 

映画『舟を編むの公開に合わせたとしか思えないタイムリーな放送(NHKBSプレミアム)だった。
辞書芸人、サンキュータツオが講演で、三省堂から二冊の小型国語辞書が出ている、なぜか、同級生で友人だった二人が喧嘩別れをしたからだと言っていたが、その経緯が再現ドラマでよくわかった。

東大でそれぞれ国語学、言語学を学んだ見坊豪紀と山田忠雄は友人だった。
三省堂の面接試験で二時間、辞書作りの信念をアピールした見坊は見事、入社。辞書編纂を任せられ、友人、山田に用例の校正を頼む。こうして世に出た辞書は『明解国語辞典』(略して明国)。
見坊が生涯、採集した用例は実に145万。これは寝食以外の時間を全て費やさないと到達できない数だった。見坊は用例採集に没頭するあまり、語釈に手をつけられず15年にわたって第三改訂版を出すことができない。業を煮やした三省堂の依頼で山田忠雄が主管となる。長年、見坊の助手に甘んじていた山田は、独自の語釈で『新明解国語辞典』を発行。その序文の『見坊に事故有り・・・(辞書を刊行することになった)』の記述を目にして怒り心頭の見坊。
実は『事故』には「都合が悪いこと」の意味があった。見坊が編み出した辞書の『事故』にはその語釈はなかった・・・。見坊はその後、『三省堂国語辞典』(略して三国)に専念。語の解釈の誤解がきっかけで二人は袂を分かち、二度と会うことがなかった。

語釈、用例を通して、二番手に甘んじた山田は積年の恨みを果たす。
上:形の上では共著になっているが(新明解)
実に:助手の職にあること実に17年
不遇:実力は十分にあるのに世間では認められないこと
ふつふつ:・・・欲望・意志・感情などが発酵に発酵を重ね、爆発寸前に至ることを表す

しかし時を経て二人の感情に変化が訪れる
ば:山田と言えばこのごろ会わないな(三省堂国語)
畏友:尊敬している友人
実に:この良友を失うには自分にとって大なる不幸・・・~夏目漱石(新明解)

ことばの魔力に魅せられ、ことばで傷ついた二人だが、心の奥底ではお互いを求め、畏友だと認め合う。だが、もはや紙に書かれたことばでしか対話できない。言葉を生業としているのに学者とはなんと厄介なイキモノなのだろうか。
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<観覧車~刈谷ハイウェイオアシス>
語釈:遊園地にある、子供から大人のための大型遊具。ゴンドラに乗り込み、閉じ込められた空間の中で眺めを楽しみ、空中を一回転して元の場所に戻る。夜の眺めは殊に幻想的。
用例:夜行観覧車
by feliza0930 | 2013-04-30 13:27 | ・LANGUAGE | Comments(0)