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●幽霊騒動と虹~『無生死の道』

被災地で幽霊騒動が起きていると言う。
白い服を着た幽霊集団を多くの人が目撃しているらしい。さぞや無念だったのだろう、まだ成仏できないのだろう・・・・と考えるのはこちら側の人間だ。彼らは思い残す余裕もなく、亡くなってしまった。全身全霊で津波に対応したからだ。亡くなった人たちの遺体は両手を合わせかたまっていた。流されてくる電信柱、家の屋根、顔に当たりそうになるのを避けようとしたのだろう。必死に生きようとした尊い死だ。
成仏できていないのは幽霊を見た人だ。残された者の思いが幽霊を作り上げる。

空にかかった虹は空中に七色の光が存在するわけではない。見ている人の網膜に映るものだ。
・・と「幽霊騒動」と「虹」、わかりやすい例を挙げて「見る側のソフト」を説明するのは芥川作家で住職でもある玄侑宗久氏だ。

氏の話はあちこち飛び、残り30分となった時テーマである『無生死』にやっとたどり着く。
人は時間の流れで自分をとらえている。60歳になったから~、70歳になったから~。その捉え方でいくと80歳になったからそろそろ死なないとになってしまう。そういうものではないと多重人格のある女性のことを話した。
彼女は60歳代。だが15歳の少年の人格も持つ。15歳の少年になった時、彼女の眼は驚くことに老眼ではない。このことは時間というものは頭の中で作っていることを意味する。
●幽霊騒動と虹~『無生死の道』_f0234728_0234750.png

                                   <台湾 黄金瀑布>


玄侑氏はよく通る声だ。テレビ出演も頻繁にあるということで慣れた口調で話す。ユーモアも交えているのだが、仏教用語の語源やら科学(?)データからあっという間に哲学になるのでぼ~っと聞いていると置いてきぼりになる。
結局『無生死』とは何なのか、頭に残ったのは「幽霊騒動」と「虹」と「15歳の少年の老眼」である。この3ワードで『無生死』を説明するにはいくらなんでも無理だが、でもこれが残っただけでも講演会を聞きに行った価値があるような気がしている。
by feliza0930 | 2013-06-20 00:56 | ・LIFE