●『国語元年』~井上ひさし

井上ひさしは「言葉」の天才である。
標準語制定をテーマに戯曲にするとは普通では到底思いつかない。
さすがに『難しいことは易しく、易しいことは深く、深いことは面白く(愉快に)、愉快なことは真面目に』をモットーとする氏だけのことはある。

明治初め、文部省役人の南郷清之輔は「全国統一話し言葉の制定」を命じられた。お国ことばを統一するとは秀吉天下統一に匹敵する大事業!お里がバラバラの南郷家の使用人、はては泥棒や公家先生など巻き込み・・・抱腹絶倒の3時間、最後はチクッと胸を刺す。
南郷家お抱えカメラマンを語り手(尾張弁)として話はすすむ。清之輔が作詞した「小学唱歌」も随所で歌われて楽しい雰囲気を醸し出す。

どのお国のどの言葉を採用しても不満が残る。ならいっそ新しい言葉を作ろうと使用人にアイディアを募る。採用したら10銭の褒美をつかわす清之輔。
「佃煮」は「しょうゆ煮」と。だがそれはお国ことばを売ることになる。そう言われると、小金は得たが心の呵責を感じていたと使用人。
ならばと花魁言葉を参考に、誰でもわかる平易な言葉を使って8個の文法を定め統一話し言葉にしようとする清之輔。
しかしできた言葉は、何とか通じでもロボットが話すような不自然なもの。とうとう清之輔は精神を病み、作った言葉を壊れたラジオのように繰り返すのだった。

この劇で主に二つのことを考えさせられた。
権力と背中合わせになった標準語制定。
人造語であるエスペラントが浸透しなかった理由。

ラジオテレビの発達、インフラ整備でお国訛りはますます消えつつあり、お国訛りで表していたニュアンスも失っている。言葉の画一化で失ったものは計り知れない。
しかしこれも時代の流れだろうか。

f0234728_1271618.jpg名古屋の演劇人と演出家による名古屋文化基金記念事業。名古屋発の質の高い演劇をリーズナブルな料金で見られた。
各区にあるという名古屋市小劇場、恵まれた環境の名古屋人が羨ましいと思った一日だった。
by feliza0930 | 2013-09-16 12:03 | ・LANGUAGE | Comments(0)