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「ただいま」とそっと呟く。
そう、この家にはもう誰も住んでいないのだ。

だが居間からオリンピックのテレビ放送が聞こえてくるようだ。
サッカー男女の快進撃。元サッカー選手の父が生きていれば、ステテコにランニング姿でソファの真ん中に陣取りテレビ三昧だったに違いない。目に浮かぶ、ソファの横にはぐるぐる首を回している扇風機。リビングのテーブルには新聞。お目当てのオリンピック番組に赤線が引いてある。

ところでアカデミー短編アニメ賞を受賞した『つみきのいえ』(加藤久仁生作)を覚えていますか?
ちょっと前ではあるが加藤久仁生展を見に行った。
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--------------------------------------------------------------------------------------------------------まるで「積木」を積んだかのような家に暮らしている老人がいた。彼は海面が上昇するたびに、上へ上へと家を建て増しすることで難をしのぎつつも穏やかに暮らしていた。ある日、彼はお気に入りのパイプを海中へと落としてしまう。パイプを拾うために彼はダイビングスーツを着込んで海の中へと潜っていくが、その内に彼はかつて共に暮らしていた家族との思い出を回想していく。(Wikipediaより)
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受賞当時、テレビで放映されていたが、美術館のスクリーンで見るとあらためて素晴らしい作品であることを思い知らされた。
寝込んでしまったおばあさんを看病した日々。娘の結婚、娘の恋人が結婚の挨拶に来た日、子供たちの声が賑やかに響く家、おばあさんと出会った若い日・・・"つみき"のように積み上げた家を下に下に潜ると甦る思い出の逆回り。
海面に埋もれた家は忘れてしまった記憶の底にあった。おじいさんはパイプを拾い上げて椅子に腰かけ思い出を愛しみながら煙をゆらす。そしてまた淡々とレンガを積み上げていく。
台詞はないが、しかしその世界観に言葉は不要だった。

家も人と同じように思い出を染みこませながら年老いてセピア色に色褪せていく。

私は庭を見た。
父が亡くなった後、枯れてしまった大きな松の木が目に入った。
母があんなに丹精こめ育てていた咲き乱れていた花はもうない。


この夏の湿気で台所には真白くカビが出ていた。
そろそろこの家を手放す時がきたのかもしれない。
日頃、あまり馴染みがないスペインの映画を見るならスペイン事情に詳しい友達と行くに限る。
いろいろと解説してもらえるからだ。
スペイン渡航歴数回のスペイン通の友達の誘いで行った映画が『屋根裏部屋のマリアたち』だ。
ポスターから楽しそうな映画の予感がする。
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1962年、パリ。株式仲介人のジャン=ルイ・シュベールは、妻シュザンヌが雇ったスペイン人メイドのマリアを迎え入れる。
彼女は、シュベール家と同じアパルトマンの屋根裏部屋で、同郷出身のメイドたちと暮らしていた。
軍事政権が支配する故郷を離れ、異国で懸命に働くスペイン人メイドたちに、次第に共感と親しみを寄せるジャン=ルイは、やがて機知に富んだ美しいマリアに魅かれてゆくのだった。しかし、そんな夫の変化に無頓着なシュザンヌは、彼と顧客の未亡人との浮気を疑い、夫を部屋から追い出してしまう。
こうしてその夜から、ジャン=ルイはメイドたちと同じ屋根裏で一人暮らしを始めるが、それは彼に今まで味わったことのない自由を満喫させることになる・・・・。
(映画公式HPあらすじより)
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この間見た『ヘルプ 心がつなぐストーリー』はアメリカのメイドの話。そしてまだまだ記憶に新しい40パーセント超えドラマ『家政婦のミタさん』は日本のメイド。
”家政婦ブーム”なのだろうか?

これらのドラマや映画には、メイド(ヘルパーor家政婦)と派遣された家庭の双方が今までの価値観をぶっ壊して再生していくという共通のテーマがある。
そして『ヘルプ』には今尚アメリカに根強く残る黒人差別問題があった。『屋根裏部屋』には・・・
何でしょう。フランス人のスペイン人に対してのこの強烈な上から目線の映画。しかしそんな差別を『ヘルプ』のように声高に批判してはいない。フランス人>>スペイン人があたかも既成概念のように描いている。スペイン人がこの映画を見たら気を悪くしないだろうか心配になった。
美しいアンナへの恋心からか、パワフルなメイドたちに感化されたからか変わっていくジャン。とうとうアンナと・・・いかにもありがちな陳腐な展開、ああ、それだけはやめてほしかった007.gif。で、三年後・・・後半は簡単に先が読めてしまった(-_-;)のがちと残念だった。だが笑いどころも多く、ラストはハートフル。頭が沸点を超えているほどの暑い中見るには、肩もこらずピッタリの映画であった。

映画のあとのお茶タイム063.gif
スペイン通の友達曰く「ねぇ?この映画、スペインをステレオタイプに見ていない?」
設定ではスペイン北部出身のメイドたちなのに、3年後、故郷に帰ったメイドたちが住む場所はどうみても太陽サンサンとまぶしいほどのアンダルシア地方。
屋根裏部屋でメイドたちが開くパーティーでみんなが歌って踊るフラメンコもおかしい。スペイン≒フラメンコと私たちの描くイメージだが、実はフラメンコはアンダルシアでも一部の人たちが愛好する音楽。多くは観光客向け。それに彼女たちの食べるものはお決まりのパエリアにトルティーヤ。
さすがスペイン料理にも詳しい友達は映画の中のパーティーの献立にもチェックしている。
そして出てくるスペイン人は皆、単純で底抜けに明るい。

スペインとフランスは隣の国なのに、人はついステレオタイプで見てしまいがちなのですね。
・・・・注意、注意。


*スペイン映画だと思っていたらフランス映画でした。そりゃあ、そうでしょうねぇ。