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f0234728_16284269.jpgポロックは私にいろいろなことを残した。

なぜポロックの絵がわからないのか?
そもそも抽象画とは何だろうか?
ピカソには形が残っているが、ポロックには形さえもない。

ポロックは若い時から強度のアルコール依存症だった。心理セラピーを受け一時克服したようにみえたが、再発した。そしてそれが結局、命取りとなってしまった。
ポロックに限らず画家はなぜ病んだ人が多いのか?
病んでいるからこそ普通の人が見えないものが見えるのか?バランスを欠いた精神が芸術に昇華させるのだろうか。
考えるきっかけをくれたという意味では私にとってそう、確かに「ピカソを超えた」のかもしれない。

CDもポロックの置き土産の一つだ。
ポロック展の会場ではポロックが好きだったジャズを収めたCDが売っていた。迷ったが次に美術館に行ったときに買えばいいと思った。どうせアートショップで売っているだろう。
展覧会が終わってショップに行った。品切れだった。入荷予定もないとのことだった。
そうなると俄然欲しくなるのが人の常?次の開催予定の東京国立近代美術館に尋ねてみた。
「CDはこちらに入るかどうかわかりませんが、入ったとしてもネットでは受け付けません。来館してください」ごもっともごもっとも。
「ニューヨーク美術館(MoMA)が監修したCDですのでMoMAのHPをご覧になったらいかがですか。扱っているかもしれませんよ」。ニューヨーク?トンデモナイ。
私はまだタカをくくっていた。Amazonにあるだろう。確かにAmazonであるにはあった。但しアメリカのAmazonだ。一体、郵送料がどれだけとられるやら。

しかし検索の女王(笑)はあきらめません。こうなったら意地です!
ついに関東圏の某美術館のアートショップで扱っていることを発見!
メールで問い合わせした。ところが戻ってきた返事は「在庫がなくなったのにHPを消していませんでした」だった。何日か過ぎた。そこのHP見たらまだのっている。入荷したのだろうかと思い再びメールしてみた。
そしたら、なんと家に電話がかかってきたのだ。
「以前、問い合わせしていただいた方ですね。すみません。まだHPから消していません。あれから探されましたか?」
私はあちこち探したけどとても手に入りそうもないと言った。
「わかりました。もし入荷したら連絡しますね」
だが、儀礼的な返事だと思い私は期待していなかった。
ところある日、美術館から思いがけないメールを受け取った
「入荷しました!ご購入先をまだお探しでしたらどうぞご利用ください。」
メールを受けたその日に代金を振込んだ。金曜日だった。土日が入っていたのにCDは月曜日に届いた。美術館のパンフレットも同封してあった。
丁寧で迅速な対応に感激してしまった。
「機会があったら是非そちらに寄らせていただきます」とメールでお礼を書いた。
またまたすぐに返事がきた。
「無事商品をお届け出来て何よりです。今後の励みとなる嬉しいお言葉をいただきありがとうございます」

無機質に見えるポロックの絵から素敵な美術館を知った。
これもポロックの置き土産である。
ポロックはジャズ愛好家だった。彼のアトリエには膨大な数のジャズレコードのコレクションが残されていた。
やっと手に入れたポロックJAZZ(彼のコレクションから選んだCD)を聞く。
アナログな音がどこか懐かしい。
部屋にレトロな空気が流れる。
革新的だったポロックの技法も今はレトロになっているのだろうか。
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今年はポロックをはじめいくつか絵の展覧会に行った。
どの展覧会も、熱心な学芸員のお陰か、絵の隣には解説がついていた。
会場をまわりながら私はだんだんわからなくなってくる。
私は絵を見ているのか、解説を読んでいるのか。

そんなことをこのところ考えていたら、今朝の朝日新聞で『絵を見て磨く語る力』の記事を見つけた。去年、大阪国立国際美術館で見た『風穴もう一つのコンセプチュアリズム』を思い出した。どうやら「対話型鑑賞法」と言うらしい。ゴッホを使っているところも同じだった
大阪のはタイの農民に絵を見せて自由に語らせているが、記事では中学生だ。
作品の背景を教えず自由に感想を言わせると他の人の意見も聞くという言語活動にもつながり、他の教科にも応用できるとあった。

教育的効果はこの年になってともかくとして(笑)これからはシンプルに絵と向かい合いたい。時代も作者の背景も考えずに絵と真っ白な気持ちで。解説はそう、できれば二巡目に。
138億円!
例のポロックの絵についた価格だ。
私が住む地方都市年間予算の何と1割以上である。たかが一枚の絵だ。正気の沙汰ではない。これは一体、どういうことなのだろうか。
そんな私の疑問に『Newsweek(日本版)』は親切に答えてくれた。

今、Newsweekを予約購読すると割引になる上、特典として『エコバッグにもなる超撥水バッグカバー』をもらえる。外側が黒くて内側がピンク色のバッグだ。例えば、外国に行くとする。飛行機の中ではカーディガンや手荷物を入れる。向こうについたらショッピングバッグとして使える。観光先で雨が降れば皮のバッグが濡れないように入れることができる。そんな便利なバック、見たことがない。私は『バッグカバー』*とやらを是非とも欲しくなった。それにNewsweekを読めば世界の出来事もわかる。いや、その時の私は、バッグももらえるし、世界も知ることができるだった。

待ちわびていたバッグカバーが、本と別送でようやく届いた。あれ?思っていたより包みが軽い、小さい。嫌な予感がした。包みを開けた。あちゃー!想像していたのと質感が違う。安っぽい。でもちょっと考えればわかるもの。所詮おまけなのだ。直ちにリサイクルショップいきの箱に直行だった。

私の落胆を知ってか知らずかNewsweekは毎週、我が家に届く。私はパラパラとめくっては世界の動きを知った気分になっている。
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<刈谷・フローラルガーデンよさみ>

そうそう、話は常軌を逸した値段の、絵のことだ。
Newsweekにはいろいろ理由が書いてあった。万が一、値段が下がっても絵の価値は何ら変わることはない。しかし値段が上がれば価値は上がる。
ブラジル、中国などの新興国が買いあさっている。
評価が定まっている古典より現代アートならショッピングの興奮が味わえ自分でトレンドを作れる。
そして一番納得したのがコレだ。
「例え汚い手で儲けたお金でさえ芸術品を買うと文化のパトロンになった気がする。ヨットを買うのとはわけが違う。」


*大きめのエコバッグなら『バッグカバー』になると後から気づいた。008.gif
「靴と缶ビールとタイヤホイールと落ち葉」に至る道がドキュメンタリー映画『ポロック、その愛と死』(BBC制作)によっておぼろげながら見えてきた。

戦後のニューヨーク、アートの中心を担っている画家は殆ど外国人だった。アメリカ人のスーパーヒーロー待望論の中で登場したのがポロック。ポロックはマスコミに祭り上げられ次第に自分を見失っていく。
誰もが振り向く若い女を愛人にして自己顕示欲を満足させる。画家がたむろするバーに連日繰り出し深酒をあおる。妻が勧めたドキュメンタリー出演も彼を追いつめるものとなった。カメラの前で技法をさらけ出され、彼は裸にされてしまった。映画には欠かせない演出もポロックには不本意だった。前作以上の作品を描かなければというプレッシャー。彼を追いかけるモダンアートの作家たちによる批判が彼をますます傷つける。

ポロックは再びアルコールに溺れていき、制作もできなくなっていた。そんな彼に絶望し妻は去っていく。
そして・・・あの悲劇が起きた。愛人を同乗させ飲酒運転の果ての木に激突。即死だった。一命を取り留めた愛人は「もしあの時、私が運転していたら、もしあの時、お酒を飲んでいなかっら・・・だけど言っても仕方がないこと。彼の死はロマンチックな死だったわ」

アメリカに持ち上げられ、追いつめられた44歳の人生。
「畜生!ピカソが全部やっちまったじゃないか」とポロックはピカソの画集を投げ捨てたと言う。
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無造作に塗料を投げつけただけのように見えた絵も、ピカソを超えるに超えられなかったポロックの魂の叫びのように見えてきた。
生誕100年ジャクソンポロック展』に行った。
「ピカソを超えた男」とコピーが踊れば、煽りに乗せられやすい私は行きたくなるじゃないですか?
ましてや「一生に一度の歴史的展覧会。見なかったことを後悔してほしくない。」とまで書かれたら、ハイ、私、後悔したくありません。

が、しかし・・・
私は正直だから(ホント?)、素人だから言うのだけど、超えていません。
その昔、ピカソ展に行ったけど、本当に見応えがあった。ピカソはやっぱり凄いと思った。

もし家に16畳くらいのアトリエがあって、床にキャンパスをいっぱ広げて適当に塗料をまき散らしたら・・・私もピカソを超える?!冗談ですけど。
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戦後、一躍ニューヨークモダンアートの寵児となったポロックだが、作品の行き詰まりで再びアルコール依存症に。妻との関係も悪化。若い愛人とのドライブで飲酒運転の果てに木の幹に激突し脳挫傷で即死。44歳の早すぎるピリオドだった。事故現場に残された靴、命を奪った缶ビール、外れたタイヤホール、積もっていた落ち葉を再現した展示がポロックの人生の最期のように出口近くにあった。

村上槐太といい、どうして芸術家の最期はこう悲惨なのだろう。

ポロックを描いた映画があったので借りることにした。
「靴と缶ビールとタイヤホイールと落ち葉」に至る人生が果たして映画からわかるだろうか・・・。