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キューバと言えば、忘れられない映画10本、いや5本の指に入る『苺とチョコレート』がある。
初めて見たのはもう10年以上前のことだ。今はもうなくなってしまった懐かしいゴールド劇場で見た。昔は一階はパチンコ店だったんですよね。
上映中のフィルムトラブルのお詫びということで、ラッキーなことにもう一回鑑賞できるチケットをもらった。もちろんもう一回、見に行ったのは言うまでもない。
友達からBS放送を録画したビデオをもらい、数年前には廃盤になっていたDVDを中古ではあるがとうとう手に入れた。私のお宝DVDである。
『苺とチョコレート』はいつでも私の傍にいる。

その『苺とチョコレート』の主演俳優が『セブンデイズ・イン・ハバナ』に出ていると聞いた。
同じく『苺とチョコレート』を愛する友達と、友達の友達と総勢4人で見に行った。
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『セブンデイズインハバナ』は月曜日から日曜日まで七日間に起った出来事を一日ずつ七人の監督が描いた映画だ。オムニバスかと思ったら三つくらいがつながった中途半端な(失礼)オムニバス映画であった。

月曜日『ユマ』。アメリカからキューバに映画の勉強に来た青年。空港で拾ったタクシーの運転手に強引に誘われ彼の住んでいる家へ。そこの娘に色目を使われる。卵とバナナのキューバ家庭料理を御馳走になるがあまり美味しくない。娘に誘われていったクラブ。言葉が通じなくてナンパはことごとく失敗。ただ一人誘いに乗った背の高い女性。自分の泊まっているホテルに彼女を誘う。女性はやってくるが、ホテルのフロントに呼び止められ身分証の提示を求められる。女性は男性だった(いかつい体からどうせそんなことだろうと思ったが)。彼女に(彼に)記念にとねだられるままに帽子を渡す。彼女は去っていく。The End。え、それで何が言いたいの?大して面白くない展開にだんだん眠くなる。隣の席からはスース―寝息が聞こえてくる。

火曜日のことは全然覚えていない。ところが映画のあとのお茶で、映画通の人が火曜日の『ジャムセッション』が一番良かったと言う。ネットレビューにも火曜日が最高だったと書いてあった。なんてこった、一番よいのを見逃してしまった。悔しい。

水曜日『セシリアの誘惑』は眠くはならなかったが、感情移入しにくくわかりにくい。

木曜日『初心者の日記』これが一番の曲者。あるジャーナリストがキューバの指導者のインタビューをしようとする。ところが公邸に何度行っても留守。公邸の部屋のテレビには指導者の演説がいつも流れている。ジャーナリストはホテルに戻っても海に行っても何もしゃべらない。ただ無言で人々を眺めている。さっぱりわからない。
スペイン通の友達の「カストロの演説が長いのを皮肉ったのじゃないの」と言う。実際、カストロの演説は何時間も続いたらしい。テレビに映っていた指導者は細かったので病に倒れた晩年のカストロだろうか。
金曜日の『儀式』となるとチンプンカンプンお手上げ状態だ。

一体、いつ『苺とチョコレート』のホルヘ・ペルゴリアが出てくるのだろう?
残るは土曜日と日曜日しかない。
土曜日『甘くて苦い』が始まった。中年の夫婦二人の日常。特徴のある声は『苺』に出てきたエキセントリックな女性。彼女もこの映画に出ているとは知らなかったが、あまり変わっていないのですぐにわかった。
男性は、いや声は似ているけどあまりに顔も体形も髪も違う。もしかして声がちょっと違うけど似ていないこともないこちらの若い青年かも・・
ああ、でも時の流れは残酷なもの(ーー;)。禿ていてお腹が出たデブなオジサン。あの時の繊細な芸術家青年ディエゴの面影がみじんもないこのオジサンがホルヘだったのだ。ショックだ。

日曜日『泉』は宗教の知識がないと唐突なお話だった。
それぞれのエピソードに流れる音楽も重要なテーマのようではある。確かに音楽はよかった。
あまり深く考えずに七人の監督の個性と感性を楽しみ、なかなか行くことができないキューバの風景と音楽に浸る映画なのかもしれなかった。ぶった切られた七つのエピソードをもう少し丁寧に描いてくれたら違っていたかもしれない。

ともかく『苺とチョコレート』が非常に優れた映画だっただけに、ちょっと期待外れのキューバ映画であった。
ま、たまにはそんなこともあるよね。


*日曜日の『泉』は睡魔と闘った『パリ20区、僕たちのクラス』の監督だった。あれよりは体には悪くなかった(笑)。
そして問題の土曜日『甘くて苦い』が『苺とチョコレート』の監督であった・・・・。
内容の深さは比べてみるまでもない(ーー;)
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「絶対、見て」。映画好きの友人の強力なお勧め映画だった。
台詞の隅々まで味わいたくて3回も劇場で見たという。ミニシアター系にありがちな(?)ヒューマンものと勝手に想像していたので正直なところ、さほど見たいと思わなかった。ところが、ためしにネットでぐぐってみると、アルゼンチン版『殺人の追憶』というレビューがいくつかあった。

『殺人の追憶』と言えば韓国映画の巨匠、ボン・ジュノ監督の作品。『吠える犬は噛まない』『漢江の怪物』など社会派映画でも知られている。映画通が『殺人の追憶』を「ほんとうによくできた映画だ。シーンの意味を知りたくて何度も見たくなる傑作」と言っていた映画。韓流スターは出てこないが、韓流前夜だった公開当時、マスコミの注目度も高く、さすがの韓国映画だとの評価の高い作品だった。しかし、自然に漏れ聞こえてくる映画の内容。血、死体、連続猟奇殺人事件・・・どれもこれもおぞましいモチーフ、大体タイトルからして全然そそられなかった。
でも、いつかは見なくてはいけない映画の中にランクインしていた。

さあ、とうとう見るべき時が来た!DVDを借りる。思っていたより残虐ではない。否、もしかしたら残酷&えぐい韓国映画の免疫が知らず知らずについてしまったのか。慣れとは恐ろしいものだ(^_^;)。
個人的な意見だが、韓国は一つ一つ積み上げていくサスペンスものが苦手だと思っている。推理小説もしかり。だが、これは実によく練られた脚本だった。整合性もきちんとある。ひしひしと迫りくる恐怖を見ているこちらまで感じる。ラストの落ちもきちんとつけている。
ギリアム監督の『未来世紀ブラジル』のような、あっと息を飲むシュールで斬新な映像があってびっくりした。

次はいよいよアルゼンチン版『殺人の追憶』の『瞳の奥の秘密』の番だ。レンタル開始を待って視聴。
宅ツタ(TSUTAYA宅配レンタル)の愛想のないDVDケースのおかげで、ジャケットからの先入観を持たなくてすんだ。映画が始まってすぐ、いきなり血まみれの全裸女性死体登場!DVDだとつい早送りする私が、『殺人の追憶』と同じく一度も早送りしなかった。私の「面白さ」のバロメーターの一つだ。友達ほど絶賛はしないけど、サスペンスでもありラブストーリーでもあるこの映画はかなり面白かった。軍政権下のアルゼンチンもよく描かれ社会映画としても通じるだろう。なるほど、台詞の妙味を味わうことができる大人の映画だった。アカデミー外国映画部門受賞はカンヌと違って(笑)妥当だと思う。

結局のところ『殺人の追憶』との共通点は「過去の未解決事件を追いかける」だけだった。追いかける者はかたや刑事、かたや裁判所事務官。殺人事件動機はアルゼンチン映画は愛憎。さすがのラテンです。『殺人の追憶』の方は・・犯人がつかまらない未解決事件だから不明。(現実にあった事件を基にした映画)
誰です?「アルゼンチン版殺人の追憶」と言った人は。全く別物です!
でも共通点がもう一つあった。暗い題材なのにくすっと笑える。
韓国映画とラテン映画、暗いのにそこはかとなく可笑しい、そういう意味で似ているかもしれない。
う?!本を読んでいると聞き覚えのあるメロディーが流れてくる。ピアソラ?そうだ!間違いなくピアソラだ。

カフェのお客は私ただ一人。ウェイター兼シェフ兼レジのお兄さんに尋ねる。「もしかしてピアソラ好きですか?」
先ほどまでの仕事の顔を一変させ、目を輝かして彼はこたえる。
「ええ、大好きなんです」。
お!まさかこんな場所に同志が!
「他のタンゴも聞いたけど違うんですよね。ピアソラはロックみたいに格好いいんです」
わかります。わかります。その感覚。
「そうなんですよね。ピアソラはロックでジャズでクラシックなんですね。私も普通のタンゴはまったりしすぎで」と私。ついでに「春、夏、秋、冬どれが好きですか」と尋ねてみる。すみません、ピアソラ好きしかわからない隠語です。(笑)「冬です」あ!それも同じ。
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ピアソラの曲には不協和音が多い。
だが、その不協和音のおかげで美しいメロディーがより美しく引き立つ。美しすぎて泣けてくる。

初めて聞いたのは以前勤めていた会社の昼休み、つけっぱなしのNHKFMから流れてきた。
聞いたことのない音楽だった。衝撃を受けて本当に鳥肌がたった。あれからもう10年近くたつ。
ピアソラが流れているといつでも私はキャッチできる。そのくらい聞きこんだ。

友達は「ピアソラを聞くと、不安になる」と言う。
私は「人生は短いんだ。こんなことをしていいのか」という気になる。そして「そうだ、もっとちゃんと生きなくては」と思うのだった。

今までは知る人ぞ知るピアソラだったが、いよいよ表舞台に!
フィギアスケートの高橋大輔選手の今シーズン曲はピアソラ。それも「冬」、すなわち『ブエノスアイレスの冬』です。ピアソラブーム、くるか?
中南米音楽を語るには、1950年代から台頭したヌエバカンシオン(新しい歌運動)を外せない。
ヌエバカンシオンとは、メッセージ色の強い歌で社会を変えようとする動きとその歌を言う。
ラテンらしくノリがよいメロディーなのに、歌詞はびっくりするほどシリアスだ。

『三兄弟の物語』は、キューバのヌエバカンシオンの旗手であるシルビア・ロドリゲスの代表曲の一つである。



この歌には「これを聞いて君ならどう考えるだろう」という歌詞が、繰り返し出てくる。
足元ばかり見てはだめ、遠くばかり見てはだめ、足元と遠くと両方見てもだめ、じゃあ、どうしたらいいのさ・・・と私は呟く。
私も尋ねたい。
「これを聞いて君ならどう考えるだろう」
f0234728_23561866.jpgずっ~と心にひっかかっている歌がある。
『三兄弟の物語』というキューバの歌だ。


三兄弟の物語』  シルビオ・ロドリゲス

三兄弟の年上の兄は去っていった
何かを発見し、創造する道の途中で
過ちを犯さないために
歩み始めには用心深く注意した

もうこの姿勢でどれほど歩いたことだろう
足元に向いた首はもう元には戻らない
用心することに束縛されながら
年をとり、遠くに行きたいと切望しながら
その遠くにはたどりつけなかった

はるかかなたを見ない瞳は足には役立たない
これを聞いて、君はどう考えるだろう

三兄弟のうち、真ん中の弟は去って行った 
何かを発見し、創造する道の途中で
過ちを犯さないために
歩み始めには用心深く注意していた

この賢い子は足元の石を見ることをしなかった
足をひっかける小さな穴ぼこも
通りかかるといつも転んだ
年をとり、遠くに行きたいと切望しながら
その遠くにはたどりつけなかった

すぐ目の前すら見ることができなかった瞳
これを聞いて、君はどう考えるだろう

三兄弟の一番下は去って行った
何かを発見し、創造する道の途中で
過ちを犯さないために
片方の目は上を、もう片方は足元を見ていた

彼は最も先まで道を進んだ
足元とはるかかなたの両方を見ていたから
しかし両目の視界をまとめようとした時
すでに彼の視線は焦点を失っていた
そこにいることと先へ進むことの間で
全てを見ようとすれば
何を見ているかすらわからなくなる
これを聞いて、君はどう考えるだろう
連日、熱戦が続くワールドカップ
スポーツ音痴の自分でもブラジルが強豪国であることは知っている。
下馬評ではどうなのだろうか。優勝候補なのだろうか?

ところで、『勝ち組』、『負け組』はここ数年よく耳にする言葉だ。
『勝ち組』は上手く立ち回り経済的に成功した人や組織に使われるようだ。一方、『負け組』は貧乏という意味か、どちらにしても上から目線で言っているようであまり気持ちのよい言葉でない。

この『勝ち組』、『負け組』がブラジルでは全く違う意味で使われていたことを最近知り、ちょっとショックを受けた。

f0234728_185075.jpgブラジルは約100年前より多くの日本人が移民した国だ。そんなブラジルの日系人社会で、第二次世界大戦後、日本の敗北を信じなかった人たちが『勝ち組』だ。
敗戦を受け入れた『負け組』と『勝ち組』は日系人社会全体を巻き込み、大きな抗争にまで発展した。

時がたち、『勝ち組』の人たちも年をとり、日本を訪れる。高度成長期の日本、立ち並ぶ高層ビルを眺め言い放った。「ほら!日本は勝ったじゃないか」。こんな嘘のような本当の話まであるらしい。
それはともかく、大勢の死者まで出した抗争のため、日系人社会では『勝ち組』『負け組』を口にするのは未だにタブーになっているらしい。

インターネットや情報網が発達した現代なら起こり得なかったことだろう。が、これも陽気なラテン、ブラジルで現実にあった影の部分だ。


昔は日本からブラジルに移民したが、1990年入管法改正以来、今度は多くの日系ブラジル人が日本に来るようになった。彼らは日本経済の一端を担っている大事な働き手だ。
彼らは今、故郷に想いを馳せて、祖国を応援しているに違いない。

f0234728_18503769.jpgガンバレ、ブラジル! ガンバレ、ニッポン!
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今年はたまたま○国で大ヒットの映画をいくつか見た。

f0234728_1433936.jpg『海角七号』 (台湾/2008年)
公開当時、『タイタニック』に次いだ興行成績を収めたとか。
この映画がとても日本を好意的に描いているらしいというので自分の目でしかと確かめたかった。

台湾で仕事をする日本女性と台湾人ミュージッシャンとの恋、日本の統治下にあった時代の台湾人女性と日本人教師の恋。二つの恋が絡むしっとりしたストリー・・・の触れ込みだった。しかし昔の恋はナレーションのみ、現代の恋はやたらキャンキャンほえまくるヒロインの姿で日本人の印象が悪くなるのではないかと心配するほど。しかしこのヒロインはこの役で大ブレークしたとかいうからわからない。
ラストで中孝介と人々が歌う「野ばら」の大合唱は感動的ではあったが。
日本が敗戦後、台湾に何をしたか。台湾の人々は日本に対してどう思ったか。台湾と日本の関わりの歴史と背景を考えるとこの映画は深くなるらしかった。

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『牛の鈴音』 (韓国/2008年)
韓流スターもでていない地味なインペンデント映画が、宣伝も何もしないのに口コミで広がり、300万人以上の人が見るほどの社会ブームになったとか。
私の韓国映画への扉を開いた名作『おばあちゃんの家』を超えるかと、かなりの期待をもって見に行った。
年老いた牛を飼う老夫婦の姿を追うドキュメンタリーぽい映画だった。
が、途中、あきらかにあり得ないシーンがでてきて、また、社会批判を唐突に、あまりにもストレートに入れてあったので白けてしまった。ドキュメンタリー(風)映画というのは難しい。淡々となりがちなので話にヤマを無理やりつくりたくなるだろう。

韓国の人たちはこの映画になぜそんなに共感したのだろうか。
物質文明への批判?過去を懐かしむ郷愁?未だによくわからない。

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『ルドandクルシ』 (メキシコ/2008年)
サッカー選手と歌手を目指す能天気な兄弟のいかにもラテンのノリのストリー。
メキシコで大ヒットしたらしい。
映画に出てくるトンデモ歌までヒットチャート1位をとったとか。
サッカー映画とも違う、私のお気に入りである『フランシスコの二人の息子』のような音楽映画でもない。
人生のペーソスを感じさせるちょっとほろ苦いラストに意外にじ~んときて、決して悪くない映画だったが、主演俳優の人気があったにせよ、大ヒットするほどの映画かは微妙な気がした。



これらの映画のどこが人々の琴線に触れたのか、日本人である私は想像するしかないのだが、逆に日本で大ヒットした映画も外国人から見ると不思議に見えるのもあるだろう。

こんなことも異文化理解の足がかりになるのかもしれませんね。