●縁をつなぐ

母の通院日は私の検診日だった。
家まで迎えにいけないので、タクシーに乗って病院に行ってほしいと母に伝えてあった。

検診が終わり、病院に迎えに行った。
ところが母のそばに知らない人がいる。
母が最近、知り合った近所の人だった。悪がって固辞する母を説得して、車で30分近くかかる病院まで連れてきてくれたのだった。帰りも送るつもりでいたと言われる。
丁寧にお断りしたが、有り難くて涙がでた。

その人はSさんといった。70才台だが、背筋がピンとしていて年齢よりずっと若くみえる。去年までテニスをしていたが、万が一怪我をして離れて暮らす娘に迷惑かけられないからとテニスをやめたそうだ。もうすぐ車の免許証を返さなくてはいけないので、運転できるうちにしただけのことと言われる。

「私も数年たてば、あなたのご両親のようになるのよ。これも縁。だからお礼は絶対いらないからね。前にお隣の人に住んでいたHさんにも『(お礼を)もってきたら絶交よ!』と言ってあったの。Hさんもあなたのお母さんのように遠慮されなかなかこちらに頼んで下さらなかったのよ。お母さんにもそう言っておいてね」と釘をさされる。
母にも渡したと言って、私にも住所と電話番号を書いた紙を渡された。

年賀状をもらえば嬉しいが、先々負担になることは目に見えている。「寄る年波に勝てず、これにて欠礼したい」とテニスの仲間にも書いたのよ」。先を見通し、元気なうちにやっておくべきことを着々と実行しているSさん。
「娘にもお正月も無理に帰ってこなくていいからと言ってあるの。主人との二人暮らしだから娘たちがくると大変で。帰ってきてくれる時は私が悪くなった時にね。だから私の娘たちは楽よ。」
だが、そんな素晴らしいお母さんを娘たちが疎遠にするわけもなく、元旦に家族総出でやってきたと半ば迷惑そうに、半ば嬉しそうに言われる。
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老後の道標になるようなSさんに出会い、感謝の一日だった。

Sさんのお隣に住んでいたHさんは今、他県に住んでみえる。他県に住むうちの娘が偶然、Hさんと知り合ったと驚いて電話してきた。縁の不思議さを感じる。
と同時に、「縁」は運かもしれないけど、「縁をつなぐ」のは意志によるものだと教えられた一日でもあった。
by feliza0930 | 2011-01-19 12:14 | ・LIFE