●マイケル・サンデルの白熱授業『大震災、私たちはどう生きるか』

一限目『イチローの高い年棒はフェアか』 2010年某月 参加者:東大生・一般人
ハーバード大学の超人気教授による対話型講義とはどういうものか、朝日新聞の紙面記事だけはよくわからなかった。

二限目『八百長はいけないか』 2011年某月 参加者:ビートたけし他、お笑い芸人
「(国技なので)インチキは許されない」という意見が多数占める中で「プロレスと同じスポーツなのに相撲だけ特別視は疑問」「八百長は武士の情け」意見も出てきた。サンデルはそこで“八百長”の語源を説明し、「では許される八百長はあるのか。例えば子供と腕相撲してわざと負けるのは悪いか」と問いかける。八百長、絶対NOの私だったが、次第に悪とばかりは言えないように思えてきた。しかし、同時にサンデルはもしかして誘導尋問しているのではないかと疑問も湧いてきた。彼は八百長から政治の公約の嘘、お世辞の嘘までテーマを広げ、「嘘」を考察していったが、正直?の部分もあって、バラエティ番組を見ただけでは、まだまだ彼の力はわからなかった。
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三限目『大震災、私たちはどう生きるか』(NHK)2011年4月 参加者:東京・ボストン・上海の大学生・高畑淳子(女優)、高田明(ジャパネットたかだ)・石田衣良(小説家)・高橋ジョージ(ミュージッシャン)
サンデルは今回の震災で暴動、便乗値上げや略奪が起きなかったことに世界が驚嘆したことをまず述べ、コミュニティのあり方を参加者に問う。ここまでは想定内の議論だった。(な~んだ、サンデル、大したことはない)
だが東電や東京消防庁職員によってなされたような危険な任務を負う人を、どのように選ぶかとなると俄然、議論が白熱した。志願する人か、特定の人が担うべきか、また報酬の有無は?経済的なことを動機にすべきでないという意見がでた。それに対し、義務を負っていない人には報酬が必要だと意見が分かれる。どうしたらフェアに選べられるには結局、結論は出なかった。どうやら結論を出すことはサンデル授業の目的ではなさそうだ。

そして議論は「原子力の未来」と移り核心に迫る。サンデルは次の1か2かどちらの立場をとるか参加者に選択させ、意見を述べさせる。
1.原子力のリスクを最小限にして依存を続ける
2.生活水準を下げ原子力への依存を減らす
ほぼ同数くらいだったろうか。
都会で高層ビルに暮らす人々にとって真夏の酷暑に冷房が使えないとなると生活できない。だから2は現実的でないという意見に、リスクを受ける場所と恩恵を受ける場所が違うのが問題と日本の女子学生が衝く。
飛行機も墜落すれば危ないが使わないわけにはいかない、原子力も同じというアメリカの男子大学生に、女子学生が飛行機事故と原発事故を同じレベルで比べることはできないと鋭く切り返す。このように原子力には議論すべき論点が多くあることがわかる。これも対話型議論の目的の一つであろう。

今回、バングラディッシュやアフガニスタンなど経済的に豊かでない国々や、中国など日本と緊張関係にある国からも支援の手が差し伸べられた。この大震災で国同士の関係が変わるか、サンデルは中国と日本の学生に尋ねる。中国の学生は、今回のことで昔の日本人と今の日本人は切り離すべきではないかという議論が実際ネットで沸き起こったと言う。一方、日本の学生は、中国人に対してイメージは変わったし友達になりたいと個人的には思うが、だからといって国の関係が変わるとは思えないと述べる。

サンデルは18世紀の政治哲学者ジャン・ジャックルソーの次の言葉を引き合いに出した。
「私たちヨーロッパ人は日本で起きた災害に、ヨーロッパでおそった災害と同じだけ衝撃を受けるわけではない」
すかさず日本から反論があった。「ルソーがYouTubeを見てもそう言えるだろうか」
ボストンからも声があがる。「自然災害は人間の力を超えたものだ。国や政府、その対立を超えるものだ。困難があった時、私たちは初めてグローバルなコミュニティーになりうると気づく。地球の反対側にいても私たちは日本人の痛み、苦しみを分かち合うことができる。大災害なのに暴動が起きなかった日本人の功績を人間として誇りに思える」ボストンの女子学生はこう言い切った。私は初めて震災という未曽有の大災害をプラスに捉える考えに出会った。思わず彼女に拍手を送りたくなった。日本には未来がもうないように思え、ずっとずっと悲嘆にくれていたから。

サンデルは番組の最後で結ぶ。
「議論には意見の不一致もあった。だが、今日のささやかな議論が日本人の励みになることを願う。また日本の美徳と精神が世界に大きな意味を持ち、日本の再生、復活につながると信じる」と。
サンデルの白熱授業がなぜ人々に熱狂的に支持されるのか、私はようやくわかった気がする。
by feliza0930 | 2011-04-18 23:39 | ・SOCIETY