●予選の醍醐味~X-Factor③

「歌っている時は面倒な人間関係が忘れられるわ」

16歳の少女の何がそんなにストレスなのだろうか。友達関係なのだろうか。
少女は年齢よりはるかに上にみえる。額にしわを寄せて神経質そうだ。出番を前に「失敗したらどうしよう」と手も足も震えている。
十字を切って舞台に上がった。しかし、緊張のあまりサイモンの質問にうまく答えられない。うっとうしいほど自己アピールする候補者たちのなかで、彼女は異質だ。顔もピクピクとひきつっている。
大丈夫だろうか、途中で倒れたりしないだろうか。審査員も客席も心配そうに少女を見守る。父と母はうまくいきますようにと祈っている。

歌い始める。ああ、ひょっとして・・・ひょっとして・・・
自信なさげな少女が豹変した。まるで歌のミューズが降りてきたみたいだ。思いがけない彼女の歌力に審査員も思わず座り直す。LA(審査員の一人)は叫ぶ。「驚いた!一体、何が起きたんだ。別人のようだ」。小さな体全部を使って、思いのたけをぶつけるかのように歌う。LAの声をマイクは拾う。「16歳とは思えない!」
舞台袖にいる父の頬に涙がつたう。

会場は興奮のるつぼだ。サイモンまで手を掲げて拍手している。
歌の力ってすごい!一瞬で空気を変える。
客席はスタンディングだ。拍手がなかなかやまない。
父の顔は涙でぐちゃぐちゃだ。「自慢の娘なんだよ」
歌い終わった少女は、自分に何が起きたかわからないかのように呆然として立ち尽くす。
「すごくうれしい」と言うのがせいいっぱいだ。
サイモンは言う。「なぜ君が気に入ったかというと、音楽を愛し向上心を持って真剣に取り組んでいるからだ。」白い歯を見せて初めて少女は笑う。歌う前のおどおどとした少女は、もういない。

『歌姫』誕生を目の当たりにした。予選の醍醐味である。

さぁ次回からいよいよ『ブートキャンプ』。
男子、女子、オーバー30、グループと4つのカテゴリーに分けて競いあう・・・らしい。

#1~#3までは聞くに耐えなかったり、見るに堪えない挑戦者にかなり時間を割いていた。ところが#4は何人かの合格者はさっくりカットして一瞬だけ。あまりに偏った編集が??な『X-Factor』ではあるが、これにて予選終了。
by feliza0930 | 2011-10-12 19:21 | ・MUSIC