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●『太鼓たたいて笛ふいて』と特定秘密保護法案

●『太鼓たたいて笛ふいて』と特定秘密保護法案_f0234728_1144627.jpg林芙美子と言えば『放浪記』。ギネスブック並みの公演回数記録を打ち立てた森光子の功績が大きい。だが、その後の林芙美子はあまり知られていないのではないだろうか。
井上ひさしは『放浪記』以降の林芙美子の半生を劇にした。

戦争中は前線記者として軍国小説、戦後は反戦小説を書き、時には変節の俗物として評される芙美子を大竹しのぶが熱演。
戦争は儲かる、日清戦争の補償金で産業が振興。戦争は国の描く物語。林も、お国のために喜んで命を捧げよと人々を戦地に、イケイケどんどんの小説を書く。しかし”太鼓たたいて笛吹いて“人は幸せになったか。戦地に赴いた兵隊の多くは餓死、病死。神となって靖国神社に奉られても、大黒柱を失った家族はろくに食べられないひもじい生活。
芙美子は戦後は一転、明るい小説を書くことを求められる。それが国の描く物語だから。
だが、芙美子はもう同じ轍を踏まない。傷痍軍人、戦争未亡人、戦争孤児に焦点を当て物語を書く。寝る時間を惜しみ命を削って書き続け47歳で心臓発作で亡くなる。

井上ひさしは天才だ。言葉の天才だ。
一方、井上は遅筆で有名だった。だがそれもよくわかる。音楽劇としても全くよく構成され、一分の隙もない。
面白おかしく、哀しく、見る者に感動とひっかき傷を残す。
「難しいことをやさしく、やさしいことを深く、深いことを面白く、面白いことを真面目に、真面目なことを愉快に、そして愉快なことはあくまで愉快に」(井上ひさしの言葉)

昨年、特定秘密保護法案が制定された。
日本は一体どこに向かっているのか。
誰が物語を書いているのだろうか。誰が太鼓を叩き、笛を吹いているのだろう。
2008年初演、今年で4公演目。
井上ひさしの劇は時を経てもいつも新しい。
by feliza0930 | 2014-02-17 11:11 | ・DRAMA